わかる人に贈りたい

 こんにちは、奥谷です。北海道はまだ雪の便りがありますが、関西もソメイヨシノの開花宣言が出され、だんだんと春めいた日が多くなりました。カンボジアでは今は1年で最も暑くて40度を超える日もありますが、マンゴーを毎日味わえる乾季です。1時間くらい雷鳴と共にスコールのような雨が降り続く雨季はあと2か月もすればやってきます。これまで土色だった景色が一気に緑にあふれて、池も出現してバッファローや鳥たちが水を飲みに来たり、虫やサソリなども一斉に動き出して、毎日何かに遭遇して驚く日々です(笑)。冬から春になって桜が一気に咲き出す日本のほうが嬉しいかな…。

 さて、3月20日に中井俊作さんのお話をZoomで聞かせていただきました。初めて聞いた参加者も感動しましたし、中井さんも「若い世代が土の上に立っている人も少なからずいることを知ることができてよかったです」とおっしゃっていました。
 私たちは小さな組織ですし、中井さんも多額な謝礼をもらって満足する方ではないと思ったので、このトークイベントを企画した時点で何をお礼にしようか考えていました。事前の打ち合わせの際に、「自分の食べるものは自分で何とか作れているけど、着るものまではね…」という一言を思い出し、唯一、中井さんよりもできることを見つけた!と思ったのです。それは編み物です。といっても、編み図がないとできず、小学生以来の単なる趣味の延長です。だいぶ前に品質自体はいい毛糸を見つけて買ったものの、編みたいものが見つからず、虫に食われないようにずっと保管していました。本当はベストやカーディガンみたいな大作を創れたら一番よかったのですが、そこまで技術が及ばず、帽子になりましたが、初めて挑戦するので、何回か解いては編みなおして、贈ったら使っていただけるくらいまでのレベルには仕上げたつもりです。

 もう春も近づいてきているので季節外れでしたが、何とか講演の3月20日に間に合うように編み上げて、お送りしました。当日の夜22時ごろに知らない番号から携帯電話が鳴って、恐る恐る出たところ、中井さんからでした。「いやー、ちょうど欲しいと思っていたんだよ。今も被りながら電話しているよ!」と、とても嬉しそうなお声でした。それを聞いて、ほっと安心しました。
 帽子なんて、もっと手が込んだおしゃれな工業製品、安くて機能的なものはいくらでも手に入ると思うのですが、手編みだからと喜んで使ってくれる人に届けることほど嬉しいことはありません。もっとスキルを上げねば、と自分を鼓舞しています。