除草剤不使用栽培に光!

楠クリーン村代表 高田夏実

8月5日現在、稲の栽培管理が今までの中で一番順調です。栽培管理というのは、主に苗を植えた後の水管理と雑草対策を指します。他にも細かい管理は様々ありますが、除草剤を使用せずに育てる米はとにかく草対策が命です。
私が楠に来た頃は、夏の間中、5〜6人が約2か月もの間つきっきりで田んぼに入って手作業で草を抜いていました。周りの農家から見たら「いやいやもう手遅れでしょう」「そもそも除草剤不使用なんて無謀だよ」と言われても仕方ない状況でした。その後、さまざま手を尽くして来ましたが今年は、この先採用できそうな段取りが見えて来たのでレポートにまとめます。

①深水管理
田んぼに稲を植えた後、深く水を張る「深水管理」を5年前から実施しています。深めに水を張ることで酸欠状態を作り出し、ヒエなど特定の雑草を抑えることができます。5年前から実施したと書きましたが、はじめの数年は田んぼの高低差が原因で深水管理が効く場所、効かない場所の差が開いてしまいました。今年は田植え前の5月に高低差をきっちり均したことにより、深水管理が真価を発揮しました。
※深水栽培は近隣の有機農家が取り入れていた手法を学び、取り入れました

①チェーン除草
まず前提として、稲を植える前日に土を柔らかくして水持ちを良くするために代かきをします。ここである程度雑草の根がひっくり返されるのですが、稲を植えた数日後には小さな雑草が生えてきます。
こうした小さな雑草をたたくために作ったのがチェーン除草機です。
チェーンを引いて田んぼの中を歩き、小さな草を絡ませて取り除きます。
なお、稲は活着しているので引き抜かれることはありません。
これでまず、田植え直後の小さな雑草を取り除いておきます。
※チェーン除草機は「自給自足の自然菜園12か月(宝島社)」を参考に作りました!

②手押し除草機
次に田植えから10日〜2週間後に、動力付き手押し除草機で草を取り除きます。ひとつの目のチェーン除草と違い、稲と稲の株間を通るので稲の根本に生えている雑草を取ることができないというデメリットはありますが、通った場所の草は抑えることができます。ここがメインの除草なのでタイミングを逃さず、抜かりなくやり遂げることが大事です。

③酢除草
最後の仕上げが、酢除草です。タイミングは雑草の伸び具合によって決めますが、出穂(しゅっすい)前、つまり稲穂が出てくる前までに完全に終えておく必要があります。
酢除草の原理としては、酸度2.5%(通常の食酢は4%程)に薄めたお酢を田んぼに満遍なく撒くことで雑草の葉にお酢をかけます。そこに気温25度以上の晴れ(雨の日はだめ)という条件が加わると、生理障害を起こし、酢があたった葉のみが枯れます。

草そのものが枯れるわけではなく、葉が茶枯れることで雑草の勢いが弱まり、その間に稲が伸びれば地面が影になり雑草が稲を越えるほど成長するという事態を抑えることができます。ちなみに稲はお酢に強くほとんど影響を受けることはないので、まさに「選択的除草」をすることができます。

お酢を撒く際は、田んぼを共同管理している方から動力散布機を借り、協力して互いの田にお酢を撒きました。お酢の効果は一時的なものなので、土への悪影響はないということを踏まえて実施しました。
※酢除草は「現代農業2022年8月号(農文協)」を参考に実施しました

以上の4ステップで、除草対策をしたところ功を奏しました。仮に5人で30日手除草をしたとすると150人日を要します。対して、今年の除草に要した日数は10人日と考えると効果は一目瞭然です。

人手があれば人海戦術で乗り切れる除草剤不使用栽培ですが、人手のない日本では色々と工夫が必要です。とはいえ、必要な人数が減ったと証明されると、さらに関わる人を減らすことになりかねないというジレンマも抱えることになります。その点に対しては、各家庭が家族分の食糧を確保できなくなる危機の解消を目指す「自給一足~我が家の食糧1割自給~」や経験の機会を与えられない子どもたちにむけた体験教育を合体させたひとつのムーブメントに繋げていく他ないと考えています。必要な人日が減ると実証されることは、自給を推進する上では強大な力になるはずですし、人手がないから農薬や化学肥料を使わざるを得ないという意見への反論にもなります。
収穫まであと約1ヶ月。ここからは虫や猪の被害に備えることになります。美味しいお米を楠の食卓や、会員さんにお届けできるよう祈っていて下さい。