シリーズ イノシシ                第2回「ジビエ料理が気候危機を救う!?」

後藤です。

ジビエ人気の高まりもあって、ネット上にはたくさんのジビエ料理のレシピが紹介されている。中には、山口県が作ったジビエ料理レシピ集もあった。猪コロッケ、猪肉と根菜の黒酢あん、猪肉のチーズソテー‥、しばらく、色んな料理を楽しめそうだ。

https://www.pref.yamaguchi.lg.jp/cmsdata/6/2/d/62df83fcf2c991e53272576def1bb9bd.pdf

今回は、時間はかかるけど、手軽にできそうなワイン煮を作ってみることにした。

冷蔵庫で一日かけて解凍した肉を1,5センチ角に切って、焼き色がつくまでフライパンで焼く。この時点で肉はまだ硬い。これをニンニクとともに炒めた玉ねぎ・ニンジンとともに赤ワインと水を沸騰させた鍋に入れて1時間、煮込む。

さらにトマト缶と調味料(しょうゆ、砂糖、塩、こしょう)を入れて1時間、味見をするとちょっと甘みがほしかったので、ハチミツを加えてみた。いいお味! 

その後、ジャガイモを入れて30分、最後に味噌を入れて30分、合計3時間あまり煮込んだら、イノシシ肉はもはや噛む必要のないトロトロの高級肉に変身した。ジャガイモと味噌は楠クリーン村産だ。

3時間かけて煮込み料理を作るなどということは、東京で仕事をしていたときには一度もなかった。リビングでこの原稿を書く合間に煮込んだので、別に3時間、つきっきりで料理をしたわけではなく、実際に手を動かしたのは、材料を切って炒めるところまで。東京でもやろうと思えばやれたのだけれど、なんとなくいつも時間に追われている感じで、そもそもやろうという発想がわいてこなかった。

もうすぐ87歳になるおばあちゃんがぺろりとたいらげ、中2の息子はおかわりをねだった。おいしい!を連発されると、長い時間をかけて作った甲斐があるというものだ。

たっつぁんご夫妻などにもお裾分けし、合わせて8人分のワイン煮を作るのにかかった費用は安いワイン1本とトマト缶など数百円。ごちそうさまでした!!

ジビエ料理はカロリーが低く栄養価も高いということで、このところ人気が高まってきている。ジビエ肉の消費を拡大することは農家の被害を減らすことにもつながり、一石二鳥、というわけだが、メリットはそれだけではない。

何よりも大きいのは、ジビエ肉の場合、スーパーで買う肉と比べて環境に負荷をかけずにすむという点だ。

私たちがスーパーで買う豚肉にしても牛肉にしても、精肉されるまでには、膨大な飼料や水を必要とする。飼料を栽培する農地や牧草地にするための森林伐採が世界中で進んでいるし、牛肉1キロあたりに必要な水の量は2万リットルに上るという試算もある。日本の畜産農家の多くは輸入飼料に頼っているので、海外からの運搬の際にも多くのCO2を排出する。

安く速く育てる経済性重視の畜産はどうしても環境に大きな負荷をかけてしまうのだ。

そもそも、気候変動に起因する気象災害や紛争などの危機をきっかけに、肉や飼料を輸入できなくなる事態に陥る可能性もある。2007年から2008年にかけての干ばつの際には、ロシアや中国をはじめ、31の国と地域が輸出の規制を実施、今回の新型コロナウイルスの拡大でも一時的に19の国と地域で輸出規制が行われた。

金さえ出せば、海外から買えるという幻想を抱き続けて自給率を高めずにいることがどれだけ大きなリスクを抱えていることか。

ジビエ肉の消費をSDGSの取り組みの一環として位置づける動きもあり、ヘルシーで栄養価が高く、環境にもやさしい肉として今後、消費は一層、拡大していくだろう。

ただ、イノシシは家畜とは違い、野生の動物なので、捕獲量は一定ではない。捕獲されたイノシシは、どのように流通しているのだろう? 

調べてみたら、思わぬ現状に驚いた。

(第3回に続く)