協同組合の精神

 こんにちは、奥谷です。この秋、労働者協同組合法という新しい法人に注目が集まっています。共同出資・共同経営の精神で、その事業は働く人たちのものであるという協働労働を謳っています。これまでも企業組合(ワーカーズコレクティブ)という方式もあり、それで事業を行っていた女性起業家も知っているので、私はあまり新しさを感じていません。協同組合というと農協や生協といった伝統的な活動もありますが、世界で最も成功している協同組合の1つとして注目されているのがスペインのモンドラゴン協同組合の取り組みです。アバター村民の一人であるブルーノさんがスペイン出身ということもあり、彼がスペイン語で見つけてきた研究・調査、そして日本で出版されている本を読んで勉強している真っただ中ですが、法律や体裁を整える前よりも大事なことは何かを感じ取っています。
 バスク人はスペインの人口でも5%くらいのマイノリティ。独特の文化を持ち、バスク語はスペイン語と全く違うそうです。独立をめぐって長らく戦い続けたところでもあり、テロリストと恐れられていたこともあります。しかし、そのバスク地方のモンドラゴンにある教会に赴任したホセ・マリア・アリスメンディアリエタ神父は貧困であえぐ人口7000人の小さな地域で、技術を身に着け、みんなで仕事をつくっていく挑戦を始めました。若い人たちが職業訓練を受け、ストーブなどを作るグループが企業として動きだし、そこからスペインで第7番目に大きいと言われるファゴールという家電メーカーを作り上げるまでに至ります。その他スーパーマーケットも有名だそうです。そこから利益10%を教育基金へと積み上げ、若者の育成に力を入れたり、金融サービスも作って独自の銀行もあります。彼らは経済的に成功を収めることによって、スペインさらには世界中で認知されるグループとなったのです。このモンドラゴン協同組合の傘下で働くメンバーは、民主的に組織を運営するために、経営にも参画します。


 ウクライナのニュースが毎日飛び込んできますが、世界中で戦火は絶えません。ミャンマーも1年前にクーデターが起きてから日々大変なことが起きていますが、市井の人々は自立を目指して頑張っています。私もクーデターの起きる1年前に訪問して現地の若者とカフェスタートに向けてお菓子づくりをやりました。彼女たちも協同組合的にチームで動いています。私がミャンマーを離れた後も、動画などを調べながらケーキ作りの腕を上げて、立派な誕生日ケーキを作るまでに至っています。政情がどうであれ、そこで人々が喜ぶサービスや商品を提供できること、地域の仕事につながることをやり続けることこそ、生き抜くことなんだと彼女らの姿勢から学んでいます。
 モンドラゴンのアリスメンディアリエタ神父が「創造し、所有せず 行動し、私物化せず 進歩し、支配せず」という言葉を残しています。これが協同組合の精神そのものではないかと思います。カーシェア、シェアエコノミー、シェアワークなどいろんな言葉が出てきますが、単に自分が持たないから“自分が楽”ではなく、その身軽さで自分を磨いたり、他の人のために動いたり、社会のために貢献する、この根幹が大事だと感じています。