「何もないところ」をどう捉えるか

 こんにちは、奥谷です。12年くらい前までは日本をベースに仕事をしていたので、農業関係で女性の起業について全国を講演や現地訪問で回らせていただいていました。「この地域はね、何もないんですよ…」と紹介されることが多かったのですが、今ある状況を嘆くのか、どう自分で作り上げていきたいかではないかと最近感じています。

 私の尊敬する農家の一人、北海道千歳市の花茶ファームの小栗美恵さん。もう25年くらい前に出会っているのですが、高知から北海道に嫁いで、「何十年後かにおばあちゃんになっても寂れる地域ではなくて、人が集まるような場所を作りたい」と夢見ていました。彼女は自分名義で事業を起こしたいと決意し、まだ北海道でも珍しかった路地のイチゴ観光農園に加え、お客さんが長く楽しんでもらうためにアイスクリーム店も始めました。北海道には多くの大型バスが止まるアイスクリーム店が連なる観光名所もありますが、そこから離れた花茶に敢えて立ち寄り、美味しいアイスクリームを食べたいという人たちが徐々に増えていきました。夏は開店前からお客さんが並ぶほどの忙しさ。現在は息子さんが農家レストランを展開し、20年近くの歳月を重ねて彼女の夢を家族と共に作り上げてきました。

自家製野菜をいれた、美味しいナポリピッツァ

 私もカンボジアに滞在中に日本人スタッフと共にあれやこれやとお客さんをツアー企画で呼び込んだり、AirBnBに登録してお客さんが来るような仕掛けを作ってきました。コンポントムも何もないところと言われていますが、お客さんも地元の若者たちと交流ができることが評判を呼んでおり、だんだんと近隣の人々から「あの場所には外国人も来るし、何か面白い場所みたいだぞ」と認知され始めています。最近はプーンアジのメンバーがパソコン教室を地元の若者向けに始め、地元の人も集まるような場所を目指しています。まだ立ち上げて5,6年ですから今後も努力が必要ですが、プノンペンやシェムリアップの街中では味わえないことがここにはあるというのが私たちの強みと思っています。

 さて、アバター村民として楠クリーン村をどうしようかと最近考えています。場所がある、寝る場所もある、水道代も不要、そしてみんなで野菜やお米・お茶をみんなで作っていくと考えていくと、実は生活費が抑えられ、起業してから一番悩ましい固定費がほとんど要らない。CWBの仲間と繋がってインドネシアの子に英語でアプリ作りの相談をしたり、それぞれの強みを持つ若者たちと一緒に推進できる強みもあるし、日本の女性起業家にも相談できる強みもある。融資制度もあるし、建てたい人は30万円から家を村内に持てる。インキュベーションとしてはかなり条件がいい場所なのではないか、と最近感じています。何もないところから、わざわざ行ってみたいという魅力的な場所を日本でも作りたいです。